生きること
死ぬこと
生きるのは良くて
死ぬのは悪い
生きていれば安心で
死ぬのは不安
……なぜ、そう思うのでしょうか
それは、たぶん、
死んだらもう何もかもお終い、全てが無くなってしまうと、思い込んでいるからなのではないかと。
単純に、私は、不思議なのです。
高齢者の多くは、死への不安が大きいように感じます。それは、いよいよ本当に死が間近になってきて、現実味を帯びてきたから……とも言えますが、それだけではなくて、そもそも生きることへの執着が物凄く強いと感じます。
これは、その世代の生きてきた時代背景にあるのかもしれません。つまり、戦いや、病気で若くして死ぬ人が多かったから、死への恐怖、生への執着がより一層強くなるのではないか、と。
日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えていますが、その年齢になって、心身ともに健康でいる人の割合って、どのくらいなのでしょう。
年齢を重ねると、思考は深まり、体験が増え、人として円熟味が増します。私は、若い頃の自分よりも今の自分の方が断然、心地よいですし、年齢を重ねていくのって好きです。
けれど、身体の細胞は、年々老化しますから、肉体は衰えていきます。それはとても自然なことですよね。
日々、体が欲するものを適量食して、適度に身体を動かして筋力を鍛え、深く穏やかな呼吸を繰り返し、感情を観察し、熟考して、体験を味わい……
そのようにしていたら
心は穏やかに、内面は深みを増しながらも、身体の自然な衰えを、淡々とありのまま受け入れて
自然にあらがわずに
死んでいくと思うのです
私は、そうありたい。
西洋医学の進歩は、多くの病を克服し、人々の命を救ってきたけれど、行き過ぎるとバランスは崩れる。
つまり、本来であれば高齢で死を迎えていたであろう人に対して、ただ請われるままに過度な医療行為を続けた結果、平均寿命が延びているだけ。決して健康で幸せなお年寄りか増えたのではない。
医者は、それが仕事だから、延命させるためにあらゆる医療行為をするでしょう。
本人の望みかもしれない。死への恐怖と、生への執着。あるいは、周りにいる者の、失う不安と、最大限にできることをして最後まで死へ抗うことが良いことだという思い込み。。。
本当にそうでしょうか。
生きている時間の長さが、その人の幸せでしょうか。早く死んだ人はかわいそうで不幸な人でしょうか。
私は、いつもいつも、今この瞬間の、ありのままの自分を、なんの条件も無く全面的に受け入れ、自分であることを喜び、人と比べることもなく、ただのこの自分を、他ならぬ私自身に認められているならば、安心立命の中にあり、寿命の長短に関わらず幸せだと思っています。
心の成長と、身体の終焉が、バランスよく淡々と進んでいく。
抗わず、ただ委ねて、その日を迎える。
私は、そんな終わり方をしたいと思っています。